SNOPAN PHOTOGRAPHY / BLOG

外資で未来のスマホカメラを研究開発するオッサンの戯言

RAW現像

蓼食う虫も好きずき

という諺があります。好きな機材を使って好きな写真を撮って好きなように仕上げれば(仕上げなくても)良いと思いますが、ならば自分の好きなように仕上げたくなるってもんです。ニコンD40で写真に復帰した当初からRAW現像していました。単純に最初から自分の好みの絵面と違ったからなんですけどね。自分の手の介在する余地がある趣味って楽しいですよね。

 

で、今回は作例を1枚使って、RAW現像から仕上げまでの工程を公開します。

  • Capture One ProでRAW現像
  • Nik Collectionで仕上げ

だいたいいつもこんな感じ。

 

では早速始めましょう。まずCapture One ProにRAWを読み込みます。

f:id:snopan:20180522222524j:plain

なんか色が汚いなあ…
ってことで色温度と緑赤被りをすこしいじってイメージに近づけます。具体的にはホワイトバランスの色温度を下げて、気持ち赤を乗せる。

f:id:snopan:20180522222935j:plain

色味はこんな感じで。

ヒストグラム見ると太陽の部分が白飛びしてます。

f:id:snopan:20180522223134j:plain

太陽が白飛びするのは仕方ないのですが、質の良くないモニターだと飛んでるところでトーンジャンプすることがあるのでハイライトをすこし制限、というのをいつもやっています。要らぬお世話かもしれないですけど。あと、露出を気持ち上げて太陽周辺のハイライト部分を太陽部分の明るさに少し寄せてます。

f:id:snopan:20180522223306j:plain

次に倍率色収差を補正します。(赤枠のところに注目)

f:id:snopan:20180522223432j:plain

f:id:snopan:20180522225704j:plain

レンズは既に紹介したSIGMAの対角魚眼です。倍率色収差が見えますね。
Capture One Proで補正します。

f:id:snopan:20180522225856j:plain

f:id:snopan:20180522225935j:plain

画像解析して倍率色収差を補正しました。個人的にソフトウエアの持っているレンズプロファイルはあまり信用していない*1ので、時間がかかっても1枚毎に画像解析させて倍率色収差補正しています。

次にシャープネス調整をします。赤枠のカモメに注目。

f:id:snopan:20180522230212j:plain

f:id:snopan:20180522230244j:plain

更に倍率を上げます。

f:id:snopan:20180522230315j:plain

デフォルトで、半径0.8、量が180となっています。

そもそも焦点距離15mm、F11で撮影しているのでパンフォーカスなのですが、デジタルでいくらでも拡大できる昨今、F11 であっても30m先とほぼ無限遠の背景ではどうしてもキレに差が出てしまいます。それを詰めていくわけです。

半径は大きすぎると輪郭の周りにリンギングがでます。例えば半径を大きくしてシャープネスの量を多くすると、、

f:id:snopan:20180522230441j:plain

羽の内側は黒く沈み、外側は白くなっているのが良く判ります。
適正なシャープネスを目指します。この場合の適正とは…

f:id:snopan:20180522231348j:plainということですかね。はい。

大体こんなもん?

f:id:snopan:20180522231509j:plain

等倍で見て確認します。

f:id:snopan:20180522231543j:plain

よさそう。

で、フレーミングを詰めます。本当は最初にやるんですけど。

f:id:snopan:20180522232048j:plain

16:9 と 2:1 で一瞬迷いましたが、2:1で。これも好みですかね。
上と下には伝えたい情報(主題や副題となるような被写体あるいは美しいトーングラデーション)は特に無いので窮屈にならない程度に切ります。

f:id:snopan:20180522232224j:plain

これを16bit 非圧縮TIFFで書き出します。次にノイズリダクションをかけます。

ノイズに対して結構気にする方なのです。*2 この画のようにトーングラデーションが重要な要素になっているような画の場合は特に。微量なノイズが乗るとディザ効果*3で階調が滑らかになるとかいう話もあり、確かにトーンジャンプを抑えてくれるときもあるのですが、個人的にはノイズを極小にしたときに出てくるヌケ感が凄く好きなのです。

論より証拠。やっていきましょう。

ノイズリダクションには専用のソフトウエア(Neat Image)を使っています。使い方などは全部省略。簡単ですから大丈夫でしょう。ノイズリダクションしたTIFF画像をNik Collectionで仕上げて行きます。最後にノイズリダクションせずに仕上げたものと比較します。

Nik Collectionにはさまざまなモジュールがありますが、Color Efex Proを使います。

f:id:snopan:20180522233210j:plain

まずプロコントラストを微量かけます。

f:id:snopan:20180522233310j:plain

どういう効果があるのかは試して頂くのが一番でしょう。無料ですし。使えば直ぐわかるはずです。あ、皆様の探求する楽しみを奪ってはいけないので、細かいパラメータは非公開にしておきますw

でグラマーグロウでハイライトを微量足します。水彩画や油絵でハイライトを足す感覚と同じですかね。

f:id:snopan:20180522233429j:plain

最後にフィルム効果:ヴィンテージ で色味とトーンを微量調整します。

f:id:snopan:20180522233527j:plain

はい出来上がり。

f:id:snopan:20180522233627j:plain

今回は3つの処理を当てましたが1つだけの時もあります。多い時で5つ位ですかね。

で、これをノイズリダクションかけずに仕上げたものがこちら。

f:id:snopan:20180522233738j:plain

…この大きさだと全然違いがわからんww
いや、こうなるのわかってたんですけどねw

例えば、写真展などでA3かA2くらいにプリントして飾ってたとします。お客様が来て「おっ」と目を止めてくれて、ぐいっと寄って来られた時に差が出ます。

このくらいの差です。(クリックして拡大してみて下さい)

f:id:snopan:20180522234948j:plain

左がノイズリダクションしたもの。右がノイズリダクション無し。このくすみ具合を気にするかしないか、って所ですね。最終的に画全体の光のヌケ具合や透明感に効いてくるように(私は)感じています。ノイズリダクションやりすぎるといわゆる塗り絵になるので、そこはパラメータをしっかり追い込んで下さい。追い込めるはずです。

WEBに乗せておしまい、であればほとんど関係ないと思います、正直なところ。でも一度気がついてしまうともう戻れないんですよね。

-----

ぶっちゃけ、最初にRAWで見せた画と、最後に仕上がりにそんなに差がないかも知れないですね、第三者的には。でも私には大きな違いなのです。1枚にこんな手間かけるのバカバカしいのかもしれません。でも趣味だから良いんですw

よくRAW現像って失敗写真を救えるからズルいみたいな話をされるじゃないですか。確かにそういう面もあるし使い方の一つだとは思うんですけど、それだけじゃつまんない。私が思うRAW現像てのは、元々100点満点で撮れた写真を120点や200点にするためのものだと思うんですよ。自分の限界のさらにその先へ突き進むための道具。せっかくデジタルになったんですから、可能性の限界を広げたいでしょ。

楽しいですよRAW現像。
アガリの責任をカメラに任せないで自分が持つんです。

カメラやレンズの個性を楽しむな、ということでは無いですよ。
その個性をアウトプットする事に対して自分が責任を持つんです。 

 

 

-----

*1:ソフトウェアの持っているレンズプロファイルはあくまで代表値。工業製品には個体バラツキが必ず存在するから個別に画像解析して補正したほうが良くない?と思うわけですが、単に好みの問題かも。

*2:過去に1DX, 6D, 5D2, D800, D700, X-E1, E2, K-5, Leica M9, etcと使ってきましたが、ノイズに関して満足した事が一度も無くて。言っちゃえばメーカーお仕着せのカメラ内RAW現像であるJPG出力も満足したことが無いです。良い悪いでなくて好みの問題でしょうけどね。

*3:オーディオやDTMの世界では常套手段ですね。詳しく知りたい方はデジタル信号処理の工学書などで量子化、あるいは量子化誤差の話をDigすると良いでしょう。