きっかけは、仲良くさせていただいているカメラマンV氏のスタジオでたまたま観たこの動画。
https://www.youtube.com/watch?v=zCjsazHO0c0&feature=youtu.be&t=54
この2.35:1の横長アスペクト比、シネマスコープ(シネスコ)と呼ばれてます。
我々、映画を観るときによくお世話になっているフレームですけども、このフレーミングで写真を撮るのがとても刺激的で面白いのです。
以前から「写真は背景7割」とか8割とか引き合いに出してきましたが、シネスコの場合はもはや背景9割w 人物をピンで撮ろうものなら9割くらいは背景。強制的に背景の絵作りについて考えさせられるフレーミングなのです。普段から背景の重要性についてよく認識している方にとってはとても楽しい頭の体操、被写体頼みで背景そっちのけの方にはさぞや地獄のフレーミングとなるでしょう。
映画映像を作成する立場の方々にとってはシネスコで人物ピン撮りなんて茶飯事な訳です。写真にだってできない訳がない…はず。という目で映画(映像)を見返すと、どんな単純なシーンであっても背景や配置など全く抜かり無い訳ですよ。当たり前でしょうけどね。そりゃ映画の撮影セットが大掛かりになる訳です。かなり広い範囲が背景として映りますから、その広範囲をちゃんと作り込むか用意しなければならない。写真を楽しんでる諸氏は同じくらいケアされてますか?
私の思うポイントを3つ。私見にて失礼。
- やはり人物一人ってのは少ない。かつ、一人で引きの場合は被写体よりも背景に圧倒的に金と時間がかかってる。多いのは人物2人。「エデンの東」では人物2人の映像が多く、配置でもってうまく場を演出してるなあと。
- 右端1/4、左端1/4エリアは背景(あるいは脇役)専用と思って良いくらい。見る側としてもそのエリアを除いた中央部しか注視出来ない。シネスコ比だからといって横長の被写体探してきてはめ込むだけだとメッチャ窮屈に感じる…ま、NGですね。
- そもそもこの横に広い画角ってある程度近寄って見る、面前を覆うくらい、が前提だと思うのです。視野を全部埋めるくらいね。映画ってそういう見方する気がします。というかシネスコの旨味ってそこだと思うのです。
故に主要被写体はよほどの理由がない限りは不要に寄らない
→必然的にフレーミングに余裕を持たせる、そういう構図力が要求される。
⇒つまり、画面全体に被写体がびっちり入ると近すぎる。窮屈
⇒画面全体のトーンが濃いと、くどい。
見せたいものを比較的中央に収め、余白をたっぷり使い、見せたいものを引き立てる背景に対して(あらゆる意味での)コストをぶっこむ。そういうフレームと思います。かなりスパルタンですがw チャレンジすると凝り固まった頭に喝が入りますよ。
他のアプローチとしては、次の瞬間を連想させるフレーミングですね。
- マクロで狙った花(に主人公の手が入ってくるのを連想させるフレーミング)とか
- 地面すれすれの超ローアングルによる広大な風景(からの頭上を馬車が走りすぎる)とか
- 光が美しく射し込む窓辺(に小石がコツンと当てられて、中から男の子が嬉しそうに外をみて遊びにきた友に手をふる)とか
- 畏怖を感じる森のシルエット(から何かを探している主人公の足音が聞こえて・・)とか
こういうのは、過去に見てきた映画体験の共通項がある相手にしか刺さらないでしょうし、何をみても全部忘れちゃう(頭使わない)層には何を投げても無駄でしょうけども、それを踏まえているならば大変良いアプローチだと思います。
いやほんと楽しい。ぜひ。
今回は諸般の都合で作品はやや控えています。来週にはLINK追加する予定。
あしからず。